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【第18回】
「未来を創るベンチャーECOシステムの模索~キャズムを越える~」

9月30日 9:45~10:45
《プレゼンテーション+座談会1》 『デジタルTVサービスの未来』

慶應義塾大学大学院 特別招聘教授 夏野 剛氏
ジャパンケーブルキャスト株式会社 取締役 前田 陽介氏
株式会社PTP 代表取締役 有吉 昌康氏
[モデレーター]NTVP代表 村口 和孝

●前田氏(プレゼンテーション)
 日本国内で普及率60%のケーブルテレビも2011年11月に完全にデジタル化が完了する予定であるが、当社ジャパンケーブルキャストはケーブルテレビ局のデジタル化を支援する事業を行っている。
 ケーブルテレビのデジタル化は、地域に根ざしたデータ放送を展開することに主眼が置かれている。活用事例としては、大分ケーブルコムでは、地域のコミュニティチャンネルとして、自分の好きな山車に双方向で視聴者が投票が出来るシステムを作っている。秋田ケーブルテレビでは、テレビでリアルタイムで地域の渋滞情報をテレビに流している。当社のデジタル技術によって、地域のCATV局が地域毎の多様なサービスを実現可能になってきている。

●有吉氏(プレゼンテーション)
 当社のスパイダーはテレビを録画する機械である。ではDVDとどこが違うか?。スパイダーは2週間すべてのTV番組を取ってしまう。そしてそれを再生し視聴するだけではなく、検索ができるという「テレビのグーグル」である。しかも検索はデータベースと接続した連携サービスができる。例えば、タレントの名前でCMや番組を検索して視聴できる。こうした視聴者のオンデマンドによってテレビの体験を変えるという経験を提供できる。
 現在は法人向けに300社の導入事例があり、事業会社の広報部などが採用し、今年から個人向けのスパイダー製品も販売を開始している。

●夏野氏(プレゼンテーション)
 デジタルTVサービスが顧客である視聴者にとって意味があるのか、本当に考えている人がいなかったのが現在の問題である。クオリティーの高いデジタルテレビを自分で設定しなくてはならないからだ。
 日本のデジタルTVの議論は、ハイビジョンのような画質の技術論が先行してしまい、視聴者のことを考えていなかったのではないか。どんどん供給サイドの議論で進んでいたけれども、視聴者や社会、国民全体の便益を高めるためにというところでしなければいけない議論がなされていなかった。しかし、このユーザーサービスでどうTVが変化するかというところにベンチャーの活躍の場があるのであり、これから面白くなるところだ。すなわち、ベンチャーによってデジタルTVは、①好きな時間にテレビが見れるタイムシフトと、②多チャンネルによる番組の選択肢を増やす、という新しいサービスを視聴者に提供できる点にあり、ベンチャーはここに狙いを定めるべきではないか?。
テレビ局は、収入源の企業広告は若年層が狙いであるのに、実際の視聴者は中高年層を狙った番組編成になっている傾向があり、テレビ局の経営陣も中高年ばかり向いた経営をしがちだ。これからは、インターネット回線を使って映像を配信する擬似テレビ局的な会社が面白くなっていくだろう。
 テレビは、コンテンツとしての放送番組と、放送を使った配信システムとしてのテレビ局に分けて考えないといけないのに、現実のテレビ局の人たちはそれを一緒くたにして動いている。アメリカでは既に番組を作る人と、放送網を持っている人が分離してビジネスが動いているにもかかわらずだ。その辺がまだ日本では変わらずにいじられていない点がこの業界の面白さであり、ビジネスチャンスがあると思っている。

◎討論セッション

●村口
 日本のモバイルは世界で最初にiモードが出来たが、今やガラパゴスと言われる。デジタルTVは世界的に変わりつつあるが、モバイルのようにガラパゴス化する危険性はないだろうか?。

●夏野氏
 世界のモバイルキャリアはそれぞれ技術はバラバラで統一されていないから、皆がガラパゴスだといえる。メディアのガラパゴスという論調は間違っていて、技術的には通信キャリアが各国で独自のサービスを提供するのと、モバイル機器メーカーが世界に出ていく話は別の次元の話だ。モバイル機器メーカーが日本にとどまっていて世界で活躍できないのは、メーカーの経営陣が英語でどんどん営業できない、あるいは現地のキャリアとパワフルな交渉ができない点にあるのではないか。サムソンとLGは世界の携帯市場で25%を取ってしまった。そもそも韓国は国内市場が大きくないので、韓国の大手企業は最初から国内より世界に出かけて市場を取ろうと目指している。日本の会社は、22歳で入社した人が30年後に役員や社長になっている。人材も技術も自社だけで調達しようとして、外の資源、海外の資源には目を向けない。
 日本の政府は、標準化のような技術面ばかりに固執する体質があって、お客様、視聴者にとってという視点がないことだ。日本のデジタルTVは世界で孤立している。それはどこの国でも同じようなサービスを求めているはずの視聴者という視点でモノづくり、サービスづくりをしないためであり、日本の政府とテレビ局は供給サイドの議論だけで物事を決めてしまっている。お客様にとって何の価値があるのかという視点で方針を決めてほしい。

●村口
 ケーブルテレビの現場からみると、デジタルTVの未来はどのように見えるか?。

●前田氏
 我々は、地域のメディアとしてどうあるべきかという点で将来を考えている。テレビは受動的なメディアであるが、携帯電話を活用して、これまでテレビ局にとっては積極的に動くと思っていなかった視聴者の好みや目線をしっかり把握してコンテンツ番組に活かすことができないかと思っている。現状は、地域の情報発信はテレビ番組にはあまりなされていない。やはりデジタル技術は視聴者とテレビ局の双方向は確実にできる。具体的なサービス内容やテレビ局の姿勢や技術ノウハウが未進化なせいであり、いずれ紙ベースの町内報という情報ネットワークもテレビに置き換えることができるはずだ。

●村口
 テレビの存在は人間生活にとって不滅なのか?。ずっと生き残っていくメディアなのか?。

●有吉氏
 ともすると誤解されるが、そもそもメディアコンテンツを作っているのは新聞社でありテレビ局だ。そのコンテンツの伝送経路が印刷物、地上波、BSからインターネットやモバイルフォンの経路に変わっていく形だ。伝送経路の変化でメディアビジネスはこれからも大きく変わる。

●夏野氏
 有吉氏に付け加えると、消費者はテレビも新聞もインターネットも携帯も、聞きながら見ながらで、それらの情報は同時点において複数が個人に飛び込んでいる。このような状況はこれからも変わらない。それを供給者の方からみたらネットが新聞やテレビから消費者を奪い分断するという見方をするがそうではない。二者択一、対立軸の議論ではなくユーザーの選択肢が広がっているという現象が今起こっているのだ。

●村口
 あまりに将来の見方が錯綜しており、デジタル機器メーカーが言われるがままに多種多様なものを開発してしまった結果が現状の乱戦状態ではないか?。

●夏野氏
 結局、メーカーが消費者ニーズを充分掌握できてないから、必然的に供給者ベースで機器が作られている。三日間は無料で配信するが、その後は有料でないと視聴できないというサービスが典型で、 『キャズムを越える顧客指向の製品開発』で、こうした考えではユーザーが納得するわけがない。
 権利保護を考えて結論を出してから製品やサービスを作るのが日本だ。アメリカはまず市場に出してしまって、その後に分配を考えようという考えだと思う。YouTubeのような運営しながらビジネスを変化させていくプロジェクトは日本にはまず出てこないだろう。中国のメディアはその配信ルート上で基本的に検閲されてコンテンツに政府が口出しされるので、海外から中国に行ってもビジネスになるかどうか不確定要因が大きすぎる。

●村口
中国はコンテンツやソフトの著作権がゆるくて、あれではビジネスにならない。日本は、ベンチャーと投資家がキャズムの谷を越えようと飛び出す勇気がなくて、みんな縮こまるので、冒険しようとする人がいたとしても大勢に追随してしまう。これが問題だ。

●夏野氏
 村口さんに同感だが、それとともに、アメリカのようにVCがYouTubeのような所に数百億投資して大掛かりな社会的実験をする考えが日本にはない。

●村口
 こうした大きな時代変化の中で、スパイダーはデジタル化に向けて製品を投入していくようだが、実験をしてみた結果、ここ数年でわかったことは何か?。

●有吉氏
 今後、一般家庭用のデジタルスパイダーを2011年に提供することが大きな発展につながると考えている。スパイダーを個人に提供してわかったことは、皆さんがテレビをかなり見るということがわかった。意外だが、CMを結構多くの方が見ている。あるいは予想外の時間帯に予想外の番組を見ていることだ。例えば、あるインターネット番組配信会社の調査によると、その会社のサービスで一番見られている番組は動物に関する番組、ついで2位は身近な生活情報番組で、インターネットユーザーの好みよりも一般家庭の柔らかな嗜好に根ざしたジャンルが視聴されている。これで予想できることは、インターネット経由のTVとか、放送のテレビとかで、視聴者が求めているものはそんなに違わないということだ。

●村口
 最近の現場でデジタルテレビに関して、予想外と気づいたことはあるか?。

●前田氏
 放送のデジタル化完了予定日である2011年7月にデジタル化が100%となるのは難しいと思う。高齢者や過疎地域の家庭のTVをデジタルに換えるのは机の上で考えるほど簡単なことではなく、今からもっと国民的に盛り上げてどうやってデジタル化を終えるかを議論していくべきだ。その中でケーブルTV局がなんとか完全にデジタル化を完了しなかえればならないと動いているところに当社のビジネスがある。当社はこれまではケーブルTVにデジタル映像をひたすら送るというハードの仕組みに傾きすぎていたが、これからはどのようなデジタル映像コンテツを配信するか、どうやって視聴者が喜ぶコンテンツを作るかという番組の中身を深めることが課題だと思っている。 (了)

10:50~0:35
《プレゼンテーション+座談会2》 『キャズムを越える顧客指向の製品開発』

株式会社ブシロード 代表取締役 木谷 高明氏
株式会社ウォーターダイレクト 代表取締役 粟井 英朗氏
株式会社カンキョー 代表取締役 田才 昭二氏
株式会社TAKIZAWA OFFICE 代表取締役 滝沢 直己氏
株式会社ブイキューブ 代表取締役 間下 直晃氏
[モデレーター]NTVP代表 村口 和孝

●村口
 新しい製品やサービスを立ち上げた時、まず最初に買ってくれるのは変わりもの(オタク)であるが、販売規模は小さく、そこからメインストリームの消費者(ボリュームゾーン)にいくまでには大きな溝がある。この溝が「キャズム」と呼ばれているものだ。ほとんどのベンチャー企業はこのキャズムを越えられずに立ちすくんでしまう。キャズムを越える資本を投入しても越えられず、また資本投入しても越えられず、VCからお金調達できず、リストラ、あるいは最悪な場合は解散、撤退する。しかし、退場することは悲惨ではない。古今東西に、新事業の立ち上がりの物語がある。
 フロンティアの世界はどんどん変化している。今日は5人プレゼンしていただいたが、皆さんは日々チャレンジされている。ベンチャーがブレイクイーブンポイントを越えるまでがまさに肝要なところだが、各社のこれまでの経験でどのあたりがこうした立ち上げの重要な点だと思ったか?。

●間下氏
 我々が使えないものを顧客が使える訳はないというところからスタートしているが、キャズムを超えるためにはきっかけが必要だ。現代はあったら便利、でもMUSTではないという時代であり、マーケットに出す製品は一度使ってしまうとやめられないほどの魅力が必要だ。現在の不況では経費節減とエコ思想の嵐にあるが、この両者が購入の「きっかけ」になっている。これによって、当社のネット会議システムを使ってみようという変化が出てきた。
 当社は最初テレアポで営業していた。ドブ板を営業していくという地道な路線をとらないとキャズムは越えられないと思う。キャズムを越える時点において、販売のやり方も売り方も変わっていく。その時点で問い合わせも多くなるだけでなく、社内のモードがあらゆる面で変わってくるのではないか。

●村口
 ある程度の販売数、採用数になるまで地道にやるのが大切ということだ。自分の会社のステージがどの段階にあってプレーしているのかという意識をもたないといけない。地道にやらないといけないときに広告宣伝費を多用しすぎてもいけないし、本格的に売れ始めたステージで宣伝を絞ったままでもいけない。
 滝沢さんの会社は、イッセイミヤケのヒットブランドを作って年間50億円の商売を立ち上げた経験をお持ちであるが、その経験からマーケットにどう働きかけると広がると思っているか?。

●滝沢氏
 新商品を開発すると、最初は皆特殊なものだからといって信じてくれない。しかし、今存在しないものをどうやって見出すのかがデザイナーにとって永遠の課題だ。私が三宅一生の下にいるときは三宅が私のアイデアを見出してくれたが、他のデザイナーはネガティブだった。当時、私が創作した服は、3年、4年、5年と雌伏せざるをえず、待ちながら5年後に急に伸びた。私の経験では、マーケットの好みをデザイナーが「待てる」ということが、あるいは将来自分の対抗馬がでてくるのかを予想しながら服を作っていくことが、マーケットで売上を取っていくカギだと思う。
 日本の衣料メーカーは、海外にでなくても日本国内の需要で満足している。既に沢山のアジア人のデザイナーが海外で活躍しているが、日本は海外で一つのブランドを築けた企業がない。それは海外での人材投入、マーケティング、管理などのマネジメントに日本の問題があるからだと思う。

●村口
 カンキョーは、かつて代理店政策で失敗したときいているが、どのような経験を学んだか?。

●田才氏
 販売の成長段階に応じて会社の中身を変えていかないといけないが、それを理解していなかった。製品商品がマーケットにどの程度浸透しているかによって販売チャネルは変えるべきである。当社のかつて販売した空気清浄機の機種は最終消費者に語りかける内容と密度をより重視しなければならなかったところだが、当時は代理店による顧客営業に依存しすぎていたと思っている。

●粟井氏
 当社は、現在まで販売した水サーバーが6万台あるが、うち3万台を代理店、3万台を直販で販売している。当社のブランドが市場に浸透してきたので、来期は12万台のサーバー販売計画のうち3分の2を直販で売りたい。消費者がミネラルウォーターをワン・ウェイで業者から受け取って消費するサイクルの効率性、利便性を感じてもらえるには、代理店営業よりも直販がより効率的だ。
 我々は、ミネラルウォーターの単品商売であり、水を消費者に届けるビジネスをたえず反省して改善し、きれいでおいしく健康に良い水とサーバーを提供することに徹するつもりだ。

●村口
 木谷さんのブシロード社に関してであるが、日本では少子化傾向の若年市場だが、それでも短期間に売上25億円まで成長させたところはすばらしいと思う。アジア人で日本語ができるようになってきた人が多い中で、海外向けなど新機軸を成功させると世の中で新しいフロンティアが広がっていくのではないか?。

●木谷氏
 カードゲームのプレイヤーは世界で10社しかなく、国内ではコナミ、タカラ、バンダイ、次は当社である。当社は15歳以上のカードゲーム市場で比較的高いシェアがある。そのほかのカードゲーム会社は小学生以下向けである。そもそも当社は私が以前経営していた会社で学んだ技術、ノウハウを受け継いでおり、新たに当社のブランドを構築することに注力してきた。ブランドは宣伝広告で費用をかけるのではなく、時間をかけて良い製品を出せばお金をかけなくても作れるものだ。また、ブランドを作るにはユーザーや業界へのサポートも大事だ。こうして作りこんでいったノウハウとブランドがお金を稼いでくれる。
 カードゲームでは、技術にかたよるのは駄目だ。国内メーカーを見ると、ノウハウでは任天堂、技術ではゲームボーイ(ソニー)に軍配が上がる。大企業はブランド力が強く、コンテンツが似ていれば企業としてのブランド力があるところに一気に市場をとられてしまう。当社としては、ノウハウを整理し、ブランド力がついてきたと判断した時点で勝負を一気にかけたい。じりじりと少しずつやってくると、すぐ参入されるからだ。
 今は伝統的な大企業の技が使いづらい時代だ。企業のリストラやコストダウンで従業員のやる気を削っており、それにより技術力やノウハウの技に強みがなくなっている。ベンチャー企業は、昔よりは大企業に対抗して一気にキャズムを超えられる環境が整いつつある。

●田才氏
 当社は、過去に大失敗をした。空気清浄機で国内市場のトップシェアを取って史上最高の売上を計上したら、大手電機メーカーが参入し、ものの一年で市場を奪われた。もう一回、顧客と製品をつくりあげていくことでシェアをとっていきたい。

●村口
 技術の上にあぐらをかいていると、キャズムを超えられないし、超えたところで市場を奪われるだけではないか。

●田才
 物を練り上げていくということが大事であり、技術をユーザーに押し付けるのではない。

●滝沢氏
 現在は作り手が本気になりづらい時代環境だ。今は、良いブランドがちゃんと消費者に伝わっていない。熟練した職人、技術を駆使した商品よりも、「有名な○○さんが着ているのよ」というセールストークによって市場が席巻される。このゆがんだ構造があるために、売れている販売ルートは楽天のお店、すなわち安売店だ。これではデザイナーは長期的になりたたない。基礎となる業界のシステムが我々デザイナーを本気にさせていない。

●村口
 最後に、各社が今後3年間に向かって経営で目指す方向や取り組みを紹介願いたい。

●粟井氏
 新しい水源を確保し、デザイン性と利便性よいサーバーを変えて提供するつもりだ。あと3年で売上100億円、利益率20%を目指す。キャズムに陥ってしまわないように経営者として常に引き締めた気持ちを持っていたい。

●田才氏
 色々経験してきたことをうまく活かしながら進めたいが、一人では乗り越えられないことが沢山ある。外部とのパートナーシップを強力に進めていくことで、製品開発や販売チャネルの多様化を進めていきたい。

●間下氏
 ネット会議のマーケットが広がりはじめているので、当社のサービスをどう定着させるかが課題だ。特に、ビジネスユースだけではなく、個人や団体向けで実生活に組み込んでもらえるよう提案していく。また、ネット会議は先進国だけではなくマレーシアなどのアジア途上国でも広がりはじめている。アジア展開をここ2-3年で具体的に進めたい。

●木谷氏
 現在のエンターテインメント業界はクリエーター受難の時代であり、プロデューサーはヒットすると思った面白い仕掛けが、企業の売り方が下手なせいでユーザーにまで魅力を伝えきれていない。これは今後3年も続くと思う。カードゲーム会社は、ユーザーとのコミュニケーションをとるために、何のサービスや商品を出せばよいかということを真剣に考えていかないといけない。それを把握し接するにはユーザー・コミュニティに属するための手段やネットワークが題字と考えている。

●滝沢氏
 今のファッション業界をみると、昔のファッションショーのような空想性はなくなっている。世間がファッションに対しても現実感に重きを置いているからだ。ファッションは一種のメディアでもある。衣料メーカーは、マーケティングとブランディングを使って消費者にデザイナーのメッセージをわかりやすく伝えることでビジネスになる。それにはまずデザイナーが世の中の感性を深く研究しなければいけない。
 当社の開発立ち上げにあたっては、チームづくりをまずやった。デザイナーのように特殊にみえるベンチャー・プロジェクトでも最初のカギはやはり人材だ。そして高機能ミシン縫製という技術と東レインターナショナルという販売チャネル、あるいはスタイリストの選定だ。そのあとにメディアをどうするかを考える。現代は、ファッションのプロ達がまず評価してくれるというところから攻めていかないといけない。自分は大きなチャンスを与えられていると自覚しており、今後3年間は全身全霊をかけてブランドを立ち上げることに注力する。(了)

13:00~15:00
《プレゼンテーション+座談会3》 『世界で奮闘するバイオテック・ベンチャー』
~日本と米国の視点から~

ACUCELA Inc. CEO 窪田 良氏
株式会社レグイミューン 代表取締役 森田 晴彦氏
株式会社シクナル・クリエーション 代表取締役 柴原 聖至氏
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 代表取締役 菅野 隆二氏
[モデレーター]慶應義塾大学知的財産センター 羽鳥 賢一教授

●ACUCELA Inc.窪田氏(プレゼンテーション)
 当社は眼科領域の治療薬の開発を行っている。飲み薬としての加齢黄斑変性症のブロックバスターと、ドライアイ対応点眼薬が主な開発製品である。
 当社のようなバイオベンチャーの場合、メガファーマとのライセンス契約が重要であるが、ライセンスアウトするためには外部とのアライアンスがより重要になっており、アライアンスによって外部評価が高まり、かつ商業化のノウハウを手に入れることが出来る。そこで、アライアンスモデルの構築を充分に考える必要がある。また、ライセンス契約には継続性が重要だ。日本のメガファーマは経営陣が変わらないので交渉が継続されるが、外資の場合は2-3年ごとにトップが替わりその度に条件がデフォルトになり、やりずらい。
 バイオベンチャーはリスク分散も重要だ。そのために保有特許戦略を効果的に行わなければならないが、自社技術がよくわかる弁理士を技術毎によく探すことが重要だ。要するに特許は量ではなく質であり、排他的な強さを鮮明に際立たせることが企業にとっての特許の本質だ。また、投資家はコスト増を嫌って反対する傾向があるけれども、複数のパイプラインを持つことは会社を継続していく上で重要だ。

●レグイミューン森田氏(プレゼンテーション)
 私はキリンの製薬部門出身で、米国での経験を生かしレグイミューンを創業した。当社は、移植時の拒絶反応を防ぐ免疫拒絶抑制剤の開発に強みを持っている。
 バイオ企業が米国に研究拠点を持つメリットは、日本に比べ人的環境など20年は進んでおり、承認申請までの期間が米国は短いことだ。米国が1年に対して日本は1.5年かかる。また、バイオ市場はグローバルだが、市場の40%は米国であり、人材調達、治験環境など考えれば、バイオベンチャーを立ち上げるのは必然的に米国が有利だ。
 日本のバイオベンチャーは日本のメガファーマに過小評価されている。武田のキャンバスとのライセンス契約は、ミレニアムの買収とはあまりにも評価が違いすぎると感じている。

●シグナルクリエーション柴原氏(プレゼンテーション)
 当社のパイプラインは天然代謝物の構造を利用した新薬開発を含め4つで、新規開発項目として抗HIV新薬の開発をこの8月から開始した。新薬のSC1-003は透析患者向け低血圧への応用が大手製薬企業との共同研究で行っている。

●ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ菅野氏(プレゼンテーション)
 当社は、代謝マップの解析と代謝データベースの蓄積を行っている。メタボローム解析が基盤技術であり、企業からの受託売上は年間3億円を越える。
 当社の将来的な成長エンジンはバイオマーカーの探索と診断薬化だ。現在はうつ病マーカーの臨床サンプルでの測定を行い、よい相関関係を得ている。1~2年後の上場をにらみ、準備を進めている。

◎討論セッション

●羽鳥所長
 米国に出るための日本のバイオベンチャーへのアドバイスをしてほしい。

●窪田氏
 米国内の拠点もいろいろな特徴差がある。開発する製品によってそのための人材を確保しやすい場所に本社を置くべきだ。

●森田氏
 人材とともに、専門家のネットワークも重要で、コネクションを得やすい場所という視点で都市だけでなく具体的な場所を考えないといけない。また米国特有の個人への動機づけのためには経営陣や社員へのインセンティブ設計をしないといけない。

●羽鳥所長
 米国のベンチャーキャピタル特有の投資条件というものはあるか?。

●森田氏
 米国のVCには20マイルルールというものがある。つまり、米国のVCは車で1時間以内で投資先にかけつけることができて、マネジメントチームに目が届く、という範囲内で投資を行う。投資手法は、単純に普通株でやるというよりは原則優先株投資であり、VCがとれるリスクに置き換えて、もしくはリスクヘッジして投資する形が主流である。

●窪田氏
 VC投資では、技術よりもマネジメントチームがとても重要と考えている。技術が1.5流でもマネジメントが1流であれば投資対象になりうる。

●会場から
 米国を拠点としたバイオベンチャーであるが、なぜ日本のVCだけから出資を受けているのか?。

●窪田氏
 経営哲学の理解が日本のVCのほうが進みやすいから、必然的に日本のVCに投資をお願いすることになった。

●森田氏  日本のVCのほうが、日本特有の社内社外の信頼関係の理解が進みやすい。ただ、経営陣の国籍のために米国系、欧州系、中国系の投資家から投資を受けられないというわけではない。彼らも同じ国の投資家から投資を受ける傾向がある。日本のVCから出資を受けている以上、EXITは日本でのIPOを狙っている。(了)

15:20-17:20
《プレゼンテーション+座談会4》 『スマートフォンの未来、ガラパゴスを越えて』

株式会社アクロディア 代表取締役 堤 純也氏
インフォテリア株式会社 代表取締役 平野 洋一郎氏
NTVP代表 村口 和孝

●インフォテリア平野氏(プレゼンテーション)
 当社は今年2009年6月にスマートフォン用の文書コンテンツ作成・配信・閲覧用ソフトウェアとして”Handbook”を投入した。これによりiPhone等のスマートフォンへの文書作成配信を簡単に実現できる。国内スマートフォン市場は、普及率が2割を越え、前年比68%も伸びている(2008年)。この伸張する市場に注目して投入したものである。
 スマートフォン用文書はPC側でHandbookソフトを使って作成するが、主なコンテンツはエンターテインメントサイト、企業サイト、イベントサイト、カルチャーサイトが中心となろう。作成者はPCでホームページビルダーと同様にスマートフォン向けの本を作るように作成し、携帯ユーザーに配信していく。
 Handbookは作成・配信ソフトはASP仕様で有料(主に企業向け)、閲覧ソフトは無料ダウンロードである。

●アクロディア堤氏(プレゼンテーション)
 アクロディアは、携帯電話用ミドルウェアの開発会社であり、国内携帯電話会社だけでなく欧州・米国・中国・韓国に拠点を設けて世界展開している。売上の半分以上が海外である。
 携帯電話のハード端末は、日本は国内向けのみを考えた仕様で、iModeを初めとしたWebサービスも含めて日本独特の進化を遂げており、確かにこれはガラパゴスだ。しかし、携帯電話向けのソフトウェア・コンテンツは携帯電話の誕生以来、各国それぞれの携帯電話の細かな仕様の違いに合わせて対応したシステムを作っている。
 すなわち、携帯電話は、世界中の携帯メーカー毎に仕様が異なるために「分断化(フラグメンテーション)」が起こり、放っておけばメーカー毎にコンテンツを搭載するためのソフトウェアが必要となるが、それを解消するためにミドルウェアが存在する。

◎討論

●堤氏
 私は慶応理工学部大学院(電気工学)の博士課程に在学していたが、エレクトロニクス大企業に行くかどうか思案しつつ、結局は自分の研究分野(OSシステム)に近かった携帯電話ソフトウェアベンチャーに役員としてジョインし18年間勤務した。携帯ソフト会社で現在のミドルウェアソフト事業のコンセプトを開発し、国内携帯会社とそれを議論していたが、彼らへの導入の可能性が高いと思い、スピンアウトして現在のアクロディアを創業した。
 シリコンバレーでは、会社という区分による仲間(内輪)と外側の人という考えではなく、個人個人の私的ネットワークが各人の人生の軸にある。社内の知らない人間に頼むよりも、社外の知人のほうがずっと仕事がうまくいき、自分にもメリットがあるという考えは相当徹底していると思う。これをフェアだアンフェアだという議論をしても仕方がない。シリコンバレーはそれを前提に成り立っているのであり、日本は昔も今もこの前提的な文化をほとんど理解していない。こうした「シリコンバレーの空気」が、日本人の吸っている空気と全然違うからだ。

●村口
 アクロディアの携帯用ミドルウェアはパソコンのOSとどう違うか?

●堤氏
 携帯電話はPCと異なりOSがバラバラだ。そこでミドルウェアが各携帯電話の携帯機器と各ソフトウェアベンダーの携帯用OSを適応役となって結びつけている。

●村口
 平野社長は、中国での携帯ソフトウェア開発に注目しているが、どのような点か?

●平野氏
 中国の浙江大学(浙江省杭州市、中国中部の華東地区)で携帯用ソフトウェア開発を学ぶ学生の指導を手伝っているが、あの地域はエレクトロニクス産業が強く、この10年で猛烈な勢いで携帯関連のソフトウェアエンジニアが育ち増えている。携帯ソフトウェアエンジニアは数だけでいえば日本の首都圏の数倍ではないか。

●村口
 もともと、日本の系列取引の方が「グル」として悪名高かったわけであるが、アメリカのハイテク人脈にKEIRETSUとして真似をされてから日本が弱くなったという仮説も考えられると思う。
 堤さんはこうした日本の大企業をどう見ているか?。

●堤氏
 私は先述のように大企業就職も考えたが、先輩達を見聞きしていると、大企業には自分が思うような仕事をさせてもらえず不満がずっと続くイメージがあり、ベンチャー企業からの誘いがあってジョインした。今の大企業は野心や大望を持った人材を確保できなくなっている。私自身としては、これには簡単には変われない大企業システムの問題が第一の理由であり、大企業が自分で変わらない以上それも仕方ないと思う。

●村口
 そもそも大企業とはキャズムを越えた組織であり、キャズムを越えるための経営技術やノウハウは残っていないだろう。

●堤氏
 私は最近の若者の大企業指向を危惧している。かなり安心安全を好む若者の保守化が進行しているのではないか。混沌、リスク、苦労の後に得られる喜びというものに価値を見出せていないと思う。日本の社会はこまかい規制や指導に敏感になっていて、自由奔放さに欠けている。(了)

17:30-18:30
《慶應ビジネススクール特別セッション》 『DeNAはどうやってキャズムを越えたか』

株式会社ディー・エヌ・エー 取締役 川田 尚吾

◎川田氏プレゼンテーション

 私は去年4月からDeNAの常勤取締役を外れて非常勤取締役になり、一歩離れた立場からDeNAをみている。
 今日お話しするポイントは、次の7つだ。
 ①「初戦で勝つとは限らない。」
 ②「うまく行かなくても粘ってなんとかする。」
 ③「創るから売るへのモードチェンジが難関。」
 ④「黒字化しただけではだめで目線を上にもって次のチャンスを探す。」
 ⑤「ポテンシャルがきたら、フル投入。ためたノウハウつかって一気に。」
 ⑥「パチンコと同じで、チャンスがきたら打ち方を変える。」
 ⑦「鍛えられた筋肉で、時が来たときに最大限までValue Extract。」

 DeNAの事業領域は、PCオークション→ECショッピングを追加→携帯でのオークション(モバオク)→携帯SNS(モバゲータウン)と広がってきたが、最初からこうなると予想していたわけでは全くない。DeNAの現実の物語は試行錯誤の連続だったということだ。
 2004年にモバオク開始により、売上も加入者も爆発的に伸び、5年近くかかってPCのビッダーズで築き上げた取扱高を半年で追い越してしまった。しかし振り返ってみると、実際のビジネスという観点では2001年にECショッピングに進出した段階が大きく社内の仕事内容が変わったけれども、モバオクによる携帯への進出は一部の実験プロジェクトという雰囲気であり、DeNA全体として会社を変えるような事業転換を決めたというような認識はなかった。

●モバオクユーザーから垣間見えた新大陸
 モバオク事業を立ち上げている途中で社内でリサーチした結果、ケータイをデフォルトのネット端末としているユーザーがかなり多数いるのではないかという仮説に確信を持った。こうした多数のユーザーが存在するおかげで、現在は日本最大級の携帯アフィリエイトネットワークとなった「ポケットアフィリエイト」は、モバオクの友達紹介から半年くらいで出来てしまった。
 このようにケータイ専用ユーザーが爆発的に増加した背景は、パケット定額制の普及、公式サイトへの検索エンジン導入、勝手サイトアクセスの増加にある。加えて、携帯でのブロードバンド&オープン化が始まり、ケータイという新大陸のポテンシャルがさらに高まり、事業者がより幅広いユーザーが利用できるサービスを提供していった。
 そういう認識があって、DeNAはケータイ向けコミュニティサイト(モバゲータウン)の立ち上げを決めた。このモバゲータウンは2006年2月7日に正式スタートしたが、当初は無料ゲームで集客を行ってSNS機能で定着化をはかった。今では2009年9月に会員数1500万人突破し、月間PV195億PVとケータイSNSではNo1のポジションを確立した。

●DeNAを振り返って
 当社がまさにそうであったが、ベンチャー立ち上げのときのビジネスプランは計画どおりにうまくいかない。現在は当初の計画がうまくいくわけがないとまで思っている。いずれ計画はこけてしまうが、そのときに修正して粘れるかどうかが肝心だ。そうして粘った結果、売って黒字化しないといけないが、お客さんに売るという社内カルチャーが作れなければ売上に結び付けることは到底難しいと思う。

◎Q&A

●慶應ビジネススクール黒澤氏
 ベンチャーがキャズムで頓挫するのは価値観がアーリーアダプターとアーリーマジョリティと違うにもかかわらず同じ戦略を続けることではないか。どれかの市場グループに焦点を絞れば乗り越えられるといわれるが、共通項をとりだし製品開発をしてもどの顧客にも属さない製品できてしまってベンチャーの資金がかさんでしまうということを一般論として学んでいる。DeNAが女性にターゲットを絞ったという決断はどの段階でどのようにして行ったのか?。

●川田氏
 特に女性に絞ったわけではない。2003-04年当時はケータイをメインに使っている人はいわば異星人だった。ネット企業の戦略としては、とにかくケータイ主力で使っている人という切り口で十分にセグメントされる。我々はそこに焦点をあて、PCユーザーとは別の市場として認識し、かつ現場ではケータイユーザーにヒアリングをしまくってとにかく具体的なニーズや使い方を調べた。例えば、はまり込んでいる趣味とか好きなキャラクターも逐一具体的に聞いてまわり、DeNAの携帯サービスに取り入れた。
 モバオクをはじめる時点で方法は2つあった。一つはPC事業の経験なしにゼロベースでスタートするスタイルで、他方はビッダーズをもとに携帯事業を行いスタッフもプラットフォームも共通会場にしてしまうことだ。後者のほうが、最初から顧客はいるし100万商品が存在するから効率的と思うのは自然だ。しかし、ユーザーのアクセサビリティを考えると前者だった。市場調査やスタッフの主張もあって、DeNAはゼロベースでスタートすることにした。結果としてそれが成功で、携帯ユーザーに特化できた。これは勝利の分岐点だ。既存にあるものを無視できたのはよかった。

●慶應ビジネススクール賀来氏
 DeNAが困難なときのマインドチェンジは抵抗なく行えたか?。

●川田氏
 社内が混乱したときのいざこざはやっぱりあった。マーケティングがうまくいっていない時に、ビッダーズシステムを作ったコアメンバーの二人が売る側に変わったが、当初から一緒に働いていたシステム担当のスタッフ達がその二人の言うことを聞いてくれた。ともすれば開発側と販売側は対立して喧嘩越しになることが多いはずだが、当社では信頼できる仲間というのがベースにあって、開発のシステム側でも俺達が販売を支えてやらなきゃという思いがあった。そういう雰囲気がよく言われる社内の一体感であり、環境がどう変わろうとも社員の動く方向変化があっても衝突や混乱を少なくできたと思う。

●NTVP西戸
 ベンチャー経営の教科書を読むと、創業者が顧客開発部隊になって製品開発部隊にフィードバックすることが重要とある。川田さんが技術から営業に移られたことによってDeNAが行おうとするミッションがより社員に伝わって経営のスピードが加速されたのではないか?。

●川田氏
 データベースの構造が頭に入っている人間が営業にたつと、必要なチューニング、改造、マーケティングを変えるにはシステムに手を入れないで出来ることと出来ないことの区分けが可能なことが大きかった。また、両方の部署を知っているから、自分で感情的な対立とか調整の予想ができて、瞬時にジャッジできるのは重要だ。調整を行えば、意思決定のスピードが遅くなるからだ。それから、社外のアライアンスの提携にいっても、データベースの構造がわかってないと実際どうやったらいいかわからず、社外との会議ですぐに返答できない。つまり、DBがわかっていないと、一つのジャッジに1週間とか10日間かかってしまうが、理解していれば決断と回答を10秒で出来る。

●NTVP西戸
 携帯へのシフトが成長への踏み台になった好例だが、そこに急速に過激にシフトできたのは何かエネルギーがあったからではと思うが?。

●川田氏
 成長の踏み台という視点以外でいうと、DeNAは皆若かった。自分は当時30代だったが年寄りの部類だった。マッキンゼーからきた人は24、5歳で、オラクルからエンジニアに転職してきたコアメンバー達は23、4歳。プロフェッションはまだ定まっていなかったが、エンジニアとしてはスキルがあって若いので、いざとなればアライアンスの交渉をすることに抵抗がなかった。システムがわかり、ビジネスも少し勉強すればわかり、という学習能力の速さで人が育ってきたのが強みになったと思う。

●NTVP西戸
 今後のDeNAの狙うマーケットを説明してください。またスマートフォンをどのように考えているか?。

●川田氏
 国内についてはまだまだ色々な領域で伸びる余地はある。エンターテインメント系の市場はまだ伸ばせるとみている。海外展開はずっと調査しているが、どこに焦点を絞るかは未決定だ。日本は最近スマートフォンが成長しているが、既存の携帯端末をひっくりかえすほどではないし、海外はiモードがまだついておらず、端末の機能はまだまだだ。スマートフォンを提供しているメーカーも偏っているし、国内でも海外でもスマートフォンは超軽量PC端末として使っている人のほうが多いかなと思う。

●KBS黒澤氏
 ECに進出した意思決定はどのようなものだったか?。

●川田氏
 ビッダーズが黒字化したことの後押しが大きかった。オークションとショッピングの違いは大きく、進出決断を逡巡したが、オークションがうまくいってればショッピングに乗り出せると思った。ショッピングは、オークションと違い店が前面にでるパターンであり、DeNAは店と手をがっちり組んでネットでの売場をきちんと作っていく必要があり、ビジネス的にみてもDeNAがお店にASP的に機能を提供し、店から月額で固定費をきちんといただくという定額収入ビジネスの類型だ。メイン事業が黒字でうまくいっていてこそ、ショッピングという新規事業に資源を投入する決断が出来た。

●KBS賀来氏
 モバゲーの強烈な成長は、具体的にどのようにして会員数が増えたのか?。

●川田氏
 モバゲーはまさに「口コミ」でのびたもの。それも10代後半の高校生大学生の友達ネットワークを使ってだ。学校内の会話とか携帯メールを介して「モバゲーは面白いからお前も入れよ!」という会話が決め手になった。現在、17歳男性の6割がモバゲーユーザーになっている。これからも携帯SNSは強化するが、20代後半以上の層に向けたサービスも強化していくつもりだ。

●KBS黒澤氏
 黒字化の責任感、危機感は全社員と共有できていたか?。

●川田氏
 社内で週一回くらいミッション洗い出しのミーティングがあり、南場社長も業績や指標を必死で社員に訴えた。かなり危機感は共有していたと思う。(了)

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